挿1

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挿1

   カーズ・イン・ザ・ダーク ***  …静夏、夜道を女の子が一人で歩くのは危険だぞ…。  それは、昔から、お父さんに、お母さんに、先生達に、大人達に、しつこく言われ続けてきたセリフだ。  でも…。  正直、私はそんなモノは犬も食わない迷信でしかないと、そう思っていたんだ。  いや、まぁ、少し昔ならそうだったのだろうし、また、少し街から離れた地方なら、やはり危険はあるのだろう。昔の夜道は今よりも暗い所が多かったのだろうし、地方もこの街と比べればそうなのだろうから、それは理解できるんだ。  でも、私の住む今のここは違う。  都市は整備を重ねられて、発展を続けてきたんだもの。  街灯はこれでもかというほど立ち並び、その一つ一つの明りも質を向上させているんだし、それに空き地の整備も進み、マンション建設が次々と行われ、だから街は明りに満ち満ちているんだもの。  そして何より…。  これまでの二十年の人生において、私は夜道の一人歩きで危険な目に遭ったことなんて一度もないんだもの。     
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