挿1

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 だから、そりゃ、ニュースでは時折、夜道で女の子が事件に巻き込まれたなんて話をやってはいるけれども、それは、結局、ドラマと同じような、つまりフィクションのような話にしか、私は見てこなかったんだ。  …まぁ…。  …正直、暴漢が来ても走って逃げきってやれる自信もあったしね…。  そんな具合で、私は街の夜なんて楽しいことばかりが犇めいていて、むしろ、昼よりも人混んでなくて過ごしやすくて、危険なんてこれっぽちもないんだよ、なんて考えてたワケなんだ。  …いや、お父さん、お母さん、ごめんなさい…。  不肖の私は、ついぞ一昨日くらいになって、初めて夜道の一人歩きが本当に恐ろしいモノなんだと知ったワケだ。  闇が、ザワザワと、不穏なざわめきを見せてくれている。  四月十四日。  その日も、部活が終わって家路についてみれば、やっぱりもう辺りは真っ暗になっていた。  時間は夜の八時半を回っている。  ああ、勿論、部活は七時くらいには終わってるんだけれど、でも、一年生は普通に部活が終わった後にも、掃除やら何やらの雑用を頼まれて、しかもレギュラーを取るための自主練等々で、結局、このぐらいの時間になる。  繁華街は未だ賑やかだけれど、それ以外は人がいなくなりだす時間だ。     
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