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侍は、馬乗りの姿勢に頭の位置が低くなっていたものだから、それを頭部こめかみにまともに食らうこととなる。
轟ッ、と、鈍く重い衝撃の音がして…。
侍の身体は衝撃に押されて、地面に倒れ込んでいた。
カシャリと、龍田は柄を引き戻して、鯉口を鳴らす。
月明かりが広がってみれば、倒れた侍は白目を剥いており、どうやら意識はなかった。
「貴様、何者だ。…何だというのだ?」と、侍の残った方が言う。
「…八当たりだッ!!恨みはねぇが、…しかし、少女を力ずくで組伏そうとする根性が気に喰わなかったもんでな。…怒りの捌け口、受けて貰うぜ。」と、龍田は答えた。
静かな怒りの籠った声である。
それを受けて…。
「ふざけるなッ。」と、侍も、また、激怒して抜刀する。
抜き身の刀が、龍田の眼の前を揺らいでいる。
切っ先は死を突きつける。
…それは、怖い。
…けれど…。
龍田の怒りは、既に、恐怖よりも強い。
龍田の瞳は恐怖に負けず、未だ、激しい怒りを放っている。
侍の方は余裕の顔をしていた。
龍田の怒りの激しさになど気づいている様子もない。ただ、龍田の怪我を見て、右腕が不満足の龍田の姿を見て、どこか既に勝ち誇っている様子だった。
そんな余裕の内に…。
「うぅあああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」と、侍が気合いを発した。
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