壱 月に少女

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 侍は、馬乗りの姿勢に頭の位置が低くなっていたものだから、それを頭部こめかみにまともに食らうこととなる。  轟ッ、と、鈍く重い衝撃の音がして…。  侍の身体は衝撃に押されて、地面に倒れ込んでいた。  カシャリと、龍田は柄を引き戻して、鯉口を鳴らす。  月明かりが広がってみれば、倒れた侍は白目を剥いており、どうやら意識はなかった。 「貴様、何者だ。…何だというのだ?」と、侍の残った方が言う。 「…八当たりだッ!!恨みはねぇが、…しかし、少女を力ずくで組伏そうとする根性が気に喰わなかったもんでな。…怒りの捌け口、受けて貰うぜ。」と、龍田は答えた。  静かな怒りの籠った声である。  それを受けて…。 「ふざけるなッ。」と、侍も、また、激怒して抜刀する。  抜き身の刀が、龍田の眼の前を揺らいでいる。  切っ先は死を突きつける。  …それは、怖い。  …けれど…。  龍田の怒りは、既に、恐怖よりも強い。  龍田の瞳は恐怖に負けず、未だ、激しい怒りを放っている。  侍の方は余裕の顔をしていた。  龍田の怒りの激しさになど気づいている様子もない。ただ、龍田の怪我を見て、右腕が不満足の龍田の姿を見て、どこか既に勝ち誇っている様子だった。  そんな余裕の内に…。 「うぅあああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」と、侍が気合いを発した。     
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