壱 月に少女

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 月明かりが照らしている。よくよく見れば、白い着物を着た、美しい少女だ。  龍田は少女の元へとしゃがみ込み…。 「大丈夫か?」と、問うた。  しかし…。 「・・・・・・・・・・・・。」  少女からの返事はない。  口の前に掌を当ててみると、微かに風の流れを感じることができるから、息は在るのだろうと思う。  けれど…。 少女の頬を撫でてみたり、軽く叩いてみたりしてみても、やはり、少女の意識は戻らない。  死んではいないまでも、よほど深く気を失っていると見えた。  月明かりに照らされた…。  …美しい少女だ。  周囲を見回してみれば…。  ここは細く人気のない路地であって、加えて、気を失った二人の侍の、酷く悪党染みた顔が、転がっているではないか。  冬の夜に、空気は酷く寒々としている。 「…さて、これは、どうしたものかねぇ…???」と、龍田は月を見上げる。 月を見つめながら、舌打ち混じりに、思案していた。 ** 「…御屋形。…これは…???」  玄関先に出て、主人の帰宅を迎えた初老の男、阪崎家使用人・風間脩介(かざま・しゅうすけ)は、その状況に率直な疑問を投げつけた。  しかし、そんな疑問を気にもしていない様子で…。     
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