壱 月に少女

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「おぅ。お迎え御苦労さん。…遅くなって、悪かったな。」と、主人・阪崎龍田は普段通りの挨拶を告げた。  脩介は静かに玄関先に坐しながら、主人を凝視する。  主人の背には…。  気を失った少女が担がれていた。  主人・龍田は、少女を背負い、それを左手一本で器用に支えているのである。 「貴方が遅くなるのなど、まぁ、いつものことですから、追及は致しません。しかし、…ソレは、…一体、どうされたのですか?」  そう言う脩介の眉間には深い皺が寄っている。  厳しい目つきである。  脩介とは、普段から淡々としていて、感情が表に出ることの少ない男である。  その男が、今は、明らかな怪訝を表している。  それには、龍田も些か焦って…。 「いや、…拾ったのだ。」と、苦笑いしながら告げた。 「拾った?」と、脩介の眉間の皺が更に深くなっていく。 龍田の答えに、脩介の疑問は益々に膨らんでいた。 「まぁ、色々あってな。…というか、正直、俺にも状況が掴めてねぇんだ。…八当たりの結果に拾うしかなくなってしまったというか…。」 「…八当たり?…ですか?」 「ああ。…まぁ、細かいことを気にしても仕方ないだろう。とにかく、この少女に安静を与えたい。悪いが、床を用意して寝かしてやってくれ。」     
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