壱 月に少女

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「オマエは、相変わらず、面白味のねぇ男だな。先ほどは、少しばかり、感情が表に出て、それが面白かったんだが、また、戻っている。…長い付き合いの内に納得してしまっているとはいえ、しかし、毎日、合わせる顔じゃ。…何とかならんもんかね?」  龍田が言う。  …この主人は、ただ、面白がっている。  何度も言うが、二人は長い付き合いなのである。  龍田の言葉に、本心はないことなど、脩介は即座に見破っていた。 「何ともなりませんな。…長い付き合いに免じていただければ…。」と、脩介は、やはり抑揚のない口調で、淡々として答えた。 「つまらん。」と、龍田が言う。  口ではそう言いながらも、表情は楽しそうに笑っていた。 「さっきの、オマエの驚いた顔。あの顔だよなぁ。毎日、ああいった驚きを見せてくれれば、からかい甲斐もあるんだがな。」と、龍田は続ける。  それに、脩介は無表情のままながら、微かに軽い溜息を吐いて…。 「失礼ながら、貴方は間違っておられます。」と、告げた。 「間違っているだと?…何がだ?」 「貴方は私が驚いていたと言いますが、あれは驚いたのではなく、…呆れていたのですよ。意味が解らず、呆れていたのです。驚くなどしませんよ。…普段の貴方の奔放な行動を思えば、これしきのことで驚くのは馬鹿らしいではありませんか。貴方の行動に驚くなど、今更、無駄な疲労でしかありません。…そこを、どうか、勘違いなきようご存知くだされ。」     
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