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高く積っていた雪の一部が弾けて、黒装束に身を包んだ何者かが、刃を構えていた。
「…なッ…」と、護衛役は慌てて刀を抜こうとする。
しかし、それよりも早く黒装束の刃が、護衛役の胴を袈裟斬りに通り抜けていた。
噴出した血が真っ白な雪を真紅に染め上げ、護衛役は、その真紅の雪の中に倒れこんだ。
「くッ、曲者じゃぁッ」と、声が上がった。
途端に、竹林が緊張でビリビリと震え始める。
数十人の護衛役は葛西宗秀を取り囲む布陣を敷き、次々に刀を抜いて構えていた。
数十といったが、正確には三十人から四十人といったところだ。
一つの刃対四十の刃という構図である。
殆どの護衛役は曲者の方が逃げ出すだろうと踏んでおり、では、それをどうやって追いかけ捕縛するかを考えていた。
けれど、その予想は裏切られる。
曲者は、ザッと力強く白雪の中を踏み出して、更には先に斬り倒した護衛役の背を蹴りつけて、前へと飛び出してきたではないか。
一は四十に対して果敢にも、攻める道を選んだのである。
前衛を務めていた護衛役は、それに意表を突かれた。
数で優位という状況が隙になっていた。
護衛役の反応は完全に遅れていた。
一人、また一人と、護衛役が曲者の刃に命を斬られ果てた。
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