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おそらく、そこは…。
これから訪れるであろう、この家の主が座るべき場所だ。
疑いようもない。
恥ずかしげなく威厳を主張している様には、微塵の畏れも感じられない。
…全く、あの男らしい…。
龍田は、その男と面と向かわねばならぬこの先を想像し、深い溜息を吐いた。
そこに…。
ガラリと襖戸が開いた。
「待たせたな。」と、襖戸の向こうからは、まず、声が入ってきて…。
それから、その青年は現れた。
金刺繍で絢爛豪華な文様を多様にあしらった立派な黒羽織りを着ている。威厳と権力を、隠すことなく、羽織っているようである。
そうした威厳と権力は、青年事態の若さとは、実に不均等であるように思える。
…青年…。
そうだ。彼は未だ二十五にも満たぬ若さなのである。
…傲慢な顔だ。
細身だが背丈が高く、それが自信満々に胸を張っているから、実際よりも随分と高く見える。
…傲慢な顔が見下ろしている。
龍田は、少しばかり、そうした青年の態度に苛立ったが、けれど、それを表に出すことなどできるはずもなく、彼は、ただ、静かに頭を下げて、青年を迎え入れた。
龍田の深いお辞儀を見ること、数秒…。
「うむ。」と、青年が先の座布団に座った。
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