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なみなみ注いだトマトジュースが目の前に差し出される。
「どうぞ~」
期待するような笑顔を向けながらマルは僕が口をつけるのを見つめていた。
期待を背負って、いざ!
「いただきます」
思い切って多めの一口で飲み込んだ。
「! これは」
「どう? どう?」
感想を求めてマルが顔を近づける。
ポジティブな答えを待ってる顔をしてた。
一瞬、頭の中に色んな思いが交錯して口にする言葉を整理する。
僕は、最大限の笑顔で。
「おぃじい、でず」
何拍かの間を置いてマルが、
「ウソだよね?」
初めて聞いたような冷たい声音でマルは僕の虚勢のベールを剥がした。
俎上に乗せられ刃物に怯える僕はマルの氷のように冷たい視線に怯えてる。
視線の先には凍てつく吹雪で凍りついた湖がぼんやりと僕の姿を映していた。
定まらない目つきで僕をどうする気なのか。
とにかく僕が今できることは一つだけ。
「ごめんなさい」
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