第1話 吸血鬼はトマト好き

6/9
前へ
/24ページ
次へ
「いただきます」  グラスに口をつけて一口。  喉が渇いていたこともあって割りかし多めに流し込んだ。  そのことを刹那後悔した。 「ぐふっ!」  手で口元を覆う暇もないくらい身体の拒絶反応が速かった。 「ひ、ひひひ日々人君っっっ?」 「ま、」  ずい、って言いそうになったところで何とか堪えるけれど堪えることしか出来ない。  なんだ、なんなんだ、なんなんなんなんだ!  吐き出した赤い液体を見つめながら僕は身体を震わす。  吐血したみたいになってる。  トマトの味じゃない! 「そ、そんなに美味しくなかったのっっ? ごめんなさい、日々人君しっかりして!」 「だ、大丈夫だ、から。それよりティッシュ、を」 「はわわ、待って!」  側にあったティッシュ箱を持って何枚か出してくれた。 「はい、どうぞ」 「ありがとう」  ティッシュを受け取った時に見えたマルの不安げな表情を見て、本当に申し訳ないと思う。 「本当にごめん、そんなつもりじゃなかったんだけど」 「ううん、それより大丈夫? あの、お水で良かったら」  もう一つのグラスに水を注いで持ってきてくれた。  僕は受け取って三口で飲み干した。 「大丈夫?」 「うん。とゆうか本当にごめんなさい。テーブルまで汚しちゃって」 「いいよ、そんなの。それよりもそんなに美味しくなかった?」 「うぅ、この」  世の味とは思えない味でしたという感想が真っ先に思い浮かんだ。  軌道修正して、 「感じは、初めての感じだったなぁ、ははは、はい。美味しくなかったです」  白状した。  吐いた時点で隠しても無駄だし。 「そっかぁ、ごめんね無理やり飲ませちゃって」  青菜に塩というか、ものすごくうなだれてる。  めちゃくちゃごめんなさい。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加