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じーっと見ていた薄茶色の瞳に烈しさが宿り
「どぅおわっ」
ガバッと抱きついてきた。ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、ちょっ、何して。ここ職場だっての。おたおたと狼狽える俺の唇に
「可愛い顔しすぎ」
チュウウウウウ、吸い付くのは止めろ。俺の心臓バックバク、脇汗ダッラダラだ。永遠の愛を誓い合った伴侶といえども、職場の風紀を乱すようなことしたらいけない。いけないのに
くっっそ上手い
理性がドロドロに溶けていく。コクン、喉を鳴らした俺の舌に舌が絡む。翔の味、大好きな人の髪に指を絡め、頭を抱えるようにして熱い吐息を唾液と一緒に飲み込んだ
「・・・・・・ふう」
営業フロアの廊下に立ち深呼吸を繰り返す
今日に限って出入り口のドアが締め切られてるためか、見慣れた風景から半端ない緊張と重圧を感じる。しかぁぁあああし、ここで弱音は吐けない。翔と歩む未来は俺が望んだ道。足を止めた俺の肩を黙って、ただ抱いてくれる翔を見上げ
「大丈夫です。行きましょう」
「おう」
微笑む彼に微笑み返した
翔と結婚し、姓が赤坂から木山へと変わったことを胸を張り報告するため、翔の前へ伸びゆく腕を目で追い、指を曲げ
コンコンコン
ノックする翔を訝しく思いつつも、真っ直ぐに前を見つめた。翔がドアが大きく開き
「結婚おめでとう木山くーん! 課長! おはようございまっす」
パーン
鳴り響くクラッカーと祝福の声がシャワーのように降りかかる。なに、どういうこと? 驚きに立ち尽くす俺の手を取った翔が薬指に輝く、指輪に口づけて
「理解のある奴らに協力を頼んでたんだ。圭吾が望んだのは、こういう結婚式だろ」
笑った
完
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