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紅茶を配りながら、首を傾げていると 「高校受験を控えてたころのこと、覚えてる? 俺さ、けい兄の部屋に入り浸ってただろう」 「あー、うん、覚えてる」 忘れてたけど、答えたとたん記憶の引き出しが開いた。大学受験を控えた俺にとって湊とひなに教えるのはちょうどいい復習であり、息抜きにもなる。ただ、困ったことが一つだけ。二人は時間をズラして部屋を訪ねてきていたように思う 「あの頃さ、ひなの声に胸が震えて、笑顔に意識が飛んで、匂いに自分が違う生き物になりそうだったから避けてたんだ、ひなと二人きりになるの」 「誤解の原因はソレか」 ソレってどれ? 思ったけど声には出さない 翔の眉根が寄る。組んでいた腕を解き、長い指を顎にあてた。どうすべきかを考える翔は横から見ても格好いい。続きを待つ、静けさの中落ち着かない呼吸を繰り返す湊も、じっと翔の口が開くのを待っていた 「経験上、妖精の世界で疑いをかけられた瞬間、積み上げた愛情すべてが塵と化す。今は思い出を忘れろ。もう一度、互いに恋を始める気で口説け」 妖精の世界って・・・・・・。翔はよく俺に、妖精と会話せず俺に話せという。つまり、経験上というのは俺との関係を指していて
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