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城之内拓磨とは、顔良し、声良し、スタイル良しの三拍子揃った上に、演技力にも定評のある雅人の同世代俳優であり、最大のライバルといえる存在だ。
事実、キャラクターが被るため、ドラマのキャスティングも最終選考まで彼と奪い合うことは茶飯事であるし、3年前まで「抱かれたい男ナンバーワン」は拓磨の称号であった。
「ヤツが出るなら、俺も出る!」
「えっ、雅人さん大丈夫っすか?」
先日、たった一粒のチョコレイトを自分が食べた場面を目にしただけで狂わんばかりの形相を見せた雅人を、中村が気遣った。
「『握手と共に、抽選で10名のファンから直接チョコレイトを手渡しされる』イベントっすよ」
「雅人、無理をするな。この仕事は後輩の一橋優司に譲ろう」
「一橋優司に!?」
定吉の提案に雅人はさらに顔を引き締め、拳を掲げて立ち上がった。
「バカ言うな!アイツは25歳にして『抱かれたい男』トップ10入りした有望株で、近い将来俺の人気を凌ぐと言われているんだろう!?みすみすその時期を早めるような真似が出来るか!!」
雅人のプロ根性に、定吉が涙ぐむ。
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