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イベント司会者の進行の元、雅人と拓磨でトークを繰り広げた後に、いよいよメインイベントの時間となった。
予め抽選に当たったファンが、用意してきたバレンタイン・チョコレイトを手渡しし、握手を交わしてイベントは終了となる。
羨望のため息と悲鳴の中、選ばれた雅人と拓磨のそれぞれ10名ずつのファンは、次々と舞台へと上げられた。
「あれ、雅人さん、全然平気じゃないっすか」
ファンから差し出された品を涼しい顔で受け取る雅人に、中村が驚嘆の声を上げる。
「皆、中身が何だか分からないくらい気合いを入れた豪華なラッピングを施しているからな。雅人も心を無にして受け取っているんだ。日本の包装文化万歳!」
定吉が厳つい顔のまま、両手を上げた。最大限の喜びを表している証拠だ。
「そんなもんっすか~」
中村が間抜けな声で呟きながら感心したその時。
最後のファンが、雅人の前に立った。
「君が最後だね。ありがとう。これからも応援よろしくね」
台本通り、雅人が声をかける。
「チ……」
瞳が隠れるほど厚く重く前髪を垂らした、多毛の黒髪オカッパの女性が小声で呟きながら目の前に差し出した物は。
「チョコレイト・デス」
半透明のレジ袋に、剥き出しのまま入れられた板チョコレイトだった。
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