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「ひ、昼間は、ありがとう! 何? まだ、何か用?」
「ア……」
「君、『カオナシ』の親戚なのかな!?」
両手を差し出しながらジブリの某キャラクター張りに「ア……」ばかりを繰り返す女に、雅人はキレ気味に尋ねた。
「ア……握手……」
そういえば、インパクトのあるチョコレイトの出し方に驚き、彼女だけ握手をすっ飛ばしてしまっていたことを思い出した。
「あ、握手ね! ごめん、君だけ忘れてたよね」
何だ、そんなことかと胸を撫で下ろす。握手さえすれば、女は帰ってくれるだろう。
深呼吸をしながら雅人も両手を差し出し、女に近づいたその時。
「うわっ!」
街灯の下で見た女の両手は、茶色く染まっていた。
「そ、それは……」
「チ……チョコレイト・デス」
深夜の住宅街に、雅人の絶叫が響き渡った。
「ヨ……汚れ役も、応援します」
雅人の両手をチョコレイトまみれに汚しながら、女は不気味に微笑んだ。
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