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「ところで、アータのようなイケメンのためのイベントが2週間後に迫ってますけれど、それについては、どうですか?」
イケメンのためのイベント?
そんな質問、台本にあったか?
生放送中のスタジオで、雅人は一瞬目を泳がせる。
ADが慌ててスケッチブックに書き込んだ文字を、雅人の正面に掲げた。
『バレンタインの話をしてください。そのまま提供のM製菓CMに入ります』
「バレンタイン……だと」
「そう、バレンタイン。アータ、やっぱり学生時代からおモテになって、たくさんのチョコレイトを貰ってきたんでしょう?」
「ああ、バレンタイン……はい、そうですね……いえ、人並みですよ、はは……」
「まぁ、人並みだなんて! アータがこの一日で女性からいただくチョコレイトの数は、世間一般の男性が生涯かけて貰うチョコレイトの数に匹敵するんじゃないかしら!」
ホホッと克子は甲高く笑う。
先ほどまでの自信に満ちた喋り方から一転、しどろもどろに答える雅人の様子など全く気にとめることなく、克子の流暢な会話は続く。
「2週間早いけど、これ、アタクシの気持ちです」
克子は、トレードマークである巨大お団子ヘアに手を突っ込むと、中からM製菓のトリュフチョコレイトの包みを引っ張り出した。
「ええっ……あ、ありがとうございます。克子さんから頂けるなんて、う、嬉しいです」
雅人が恐る恐る手を差し出したところで、画面が切り替わった。
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