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「どういう風の吹き回しだ?それとも、気まぐれか?お前が俺の案に乗るなんてよお」
目の前であぐらをかく男はふてぶてしく頬づえをついてニヤリと笑った。
「別に。お前が面白いもの作ってんの見てやろうと思って。晋作がやることには興味があるし刺激になる。」
目を伏せて笑うこいつが何を考えているかはわからないが、共に同じ師の元で学んで歩んできたからこそ信用できる。それ以上にまた一緒に同じ道を歩めるのが素直に嬉しかった。
「歓迎するぜ、稔麿。」
部屋の襖の隙間から覗かせる月が二人を照らす。そしてゆっくりと手を差し出した。が、それが交わされる前に大きな音が部屋の外から響いた。
「んだよ!敵襲か!?」
高杉は勢いよく立ち上がり襖を開けた。目の前には何もかわらない庭。用心深く視線を下にずらせばそこには見慣れない女が横たわっていた。そして警戒は解かないまま、ゆっくりと一歩、また一歩と近づく。刀を鞘に収め、その鞘で女を軽く揺する。
「この女…間者かなんかか?それらしくはねえけど怪しいなあ」
そして高杉は顔にかかった髪を邪魔だと言わんばかりに女の顔からどかす。真っ青な顔にうっすらにじむ汗。顔に触れた手に伝わる異常なまでの熱。どうするか、そう考え稔麿の方へと目をやった。
「稔麿、こいつ、どうす…稔麿?」
息を飲んでその場に立ち尽くす稔麿はただ女を見ていた。その眼差しは驚いたような、懐かしそうな、でもどこか苦しそうな複雑なものだった。しかしこのままではことは悪い方へしか動かない。もしこの女が間者であれば話ができるようになるまでは生かしておくべきだ。そして話した後、斬ればいい。高杉は女を担ぎ部屋へ運んだ。
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