第三章 変な虫

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 二人そろって感嘆の息が漏れた。  通りの両脇と中央分離帯の二列、計四列ものけやき並木が星降るように光り輝いていた。  おれたちは中央分離帯に整備された歩道、光のトンネルの真ん中を歩いた。 「夏帆」  スマホのカメラを起動してレンズを向ける。彼女は両腕を大きく横に開いて笑った。シャッターを切った。光の真っ只中で夏帆が輝いていた。 「せっかくだから一緒に撮りましょ」  夏帆はスマホをインカメにして、くっつくくらい顔を近づけた。 「ページェント写んない。もうちょっと頭下げて」  ぎこちない笑顔の変な虫と、目をまん丸にし唇を尖らせた変顔の芝刈り機。これがおれたちの初めてのツーショットとなった。  おれたちはいつしか、腕を組んで歩いていた。 「一つだけピンクの光があって、それ見つけたら幸せになれるらしいよ」 「そうなんですか? 私が聞いたのは一緒にページェント見に行ったカップルは破局するってヤツだけど」 「両極端だな。んじゃ是が非でもピンクの光見つけないと」 「私たち別にカップルじゃないしなんも関係ないですけどね」 「ピンク見つけたら幸せなカップルになれるかも」 「誰かいい人が見つかってカップルになれるといいですね」  誰かいい人。その人は隣にいる。腕を組んで一緒に歩いている。おれがそう思うことを夏帆は分かっている。分かっていてあえてそういう言い方で線を引いているのだ。夏帆が引く線に、おれは踏み込まないといけない。何度でも。何度距離を置かれようとも。足踏みをしてしまったら終わってしまうと感じていた。 「いい人かぁ。夏帆しか考えらんない」 「いつもありがとうございます。あ、あそこ」  夏帆が指差す先。人だかりができていた。みんな頭上を見上げ、スマホやデジカメを向けていた。 「ピンクの光、あの辺なんじゃないですか?」 「行ってみよう」
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