第三章 変な虫

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 年が明けて。  私は二人の友人をランチに誘った。前から気になっていたオムライス屋さんだ。 「ここ、わたしも気になってたのよね~。さすが夏帆ちゃん!」  モッツァレラトマトオムライスに舌鼓を打っているのはサークルの一つ上の先輩、森本さんだ。「書道部の母」の異名を持つほど母性に溢れ、そして恰幅の良さが安心感を与えてくれる。 「私もオムライス作ることありますけど、どうやったらこんなふわふわになるんですかね」  こちらは一つ下の後輩、祥子。私は勝手に「書道部の嫁」と呼んでいる。ももちゃんと祥子、二人彼女がいるという設定だ。しかし二股のつもりはなく、それぞれを愛している。  全幅の信頼を置いているこの二人に会おうと思ったのは、切っても切ってもめげない変な虫さんについて相談しようと思ったからだった。 「随分身の程知らずの男がいたものね」  森本さんはばっさりと言い放った。 「夏帆ちゃんみたいな絶世の美女に言い寄るなんて。よほど自分に自信があるか、ただのアホよ」 「写真ないんですか?」  ちょうどツーショット写真があったので、スマホを二人に見せた。 「ページェント行ったんですか。夏帆さんめーーっちゃかわいい」  祥子は変な虫を完全に無視していた。 「男の方はフッッツーーーね。顔は下の中ってとこかしら」  森本さんはまたもばっさり。私もそこは同意見だ。下の中男。 「祥子ちゃんはこの男どう思う?」 「そうですね……」  祥子は渋々といった様子で目線を変な虫に移す。 「……小顔ですね」  森本さんがあまりにあけすけにこき下ろすものだから、祥子は少しでも良いとこを見つけようとしたのだろう。しかしやっと見つけたのが「小顔ですね」では齋藤さんが不憫になる。
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