最終章 最愛のあなたが、おれより先に死にますように

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 一月末の日曜日。  定番中の定番、水族館デートに繰り出していた。 「見て見て!」  今日の夏帆はいつも以上にテンション高めだ。 「ハシキンメ」 と、思いっきり口角を下げる。水槽のアクリルガラスの向こうに口角の下がりっぷりが特徴的な魚が泳いでいた。 「サギフエ」  間髪入れず、今度は目をまん丸に見開いて唇を思いっきり突き出す。 「表情筋が豊かだこと」 「似てるでしょ」 「めちゃくちゃ似てる。ハシキンメやばい。角度おんなじ」 「サギフエは?」 「もうちょっと口突き出さないと。あと三十センチくらい」 「修業しときます。齋藤さんもやってよ、ハシキンメ」 「よしきた」  頬の筋肉がピクピクするくらい口角を下げる。 「ハシキンメ」 「全然だめですね」 「マジかよ、ほっぺた攣りそうなんだけど」 「普段からもっと表情豊かにした方がいいですよ。そんなだから写真の時も下手な作り笑いしかできないんですよ」 「たまに鏡の前で練習してんだけどなあ」 「練習より実践あるのみですよ。ほら笑え!」  夏帆はおれの頬を左右に引っ張った。
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