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「だってあなた、今からそのおさげの子、殺すつもりなんでしょう? それは困るのよね。〝適度に追い込むだけ〟にしてくれれば良いんだけど、そうもいかないでしょう? だからわたしの〝個人的な望み〟で、妨害させてもらおうってわけ。爆弾を仕掛ける隙なんていくらでもあったわ」
今、マジカもどきは〝おさげの子〟と言った。おさげの子を殺すのは困る、と。
さっきリリィに対して言った台詞は、『〝あの人の娘〟の側で下手に高威力の魔法を使うと巻き込むから、本気で勝負できない』というような意味だった。
これらを繋ぐと、『死傷させるわけにはいかない存在』=『鈴』という見解が成り立つ。
つまり〝あの人の娘〟という台詞の〝娘〟の部分は、鈴を指しているということだ。
この推測が正しければ、マジカもどきは鈴の父親――マクレーンを知っていることになる!
俺がそう考える一方、頼りにしていた魔術師の突然の裏切りに、ビターは次第に顔を赤らめていく。
「――なるほど。契約は満了して、我々は無関係になったわけだ。お前が望むならこのまま我々の正式な仲間に入れても良かったんだが、それは無しだな。残念でならない。私が私自身のことを、どんな質だと言ったか、覚えているかね?」
一歩、また一歩。ビターはマジカもどきとの距離をつめていく。その間隔は一〇メートルも無い。
「憎い人間を始末するためなら手段を選ばない――でしょ?」
と、マジカもどきはビターの真似をするかのように、両の手を大きく広げる。
「――ご名答。では、さようならだッ!」
ビターは言い終わるのと同時に、その手首から仕込みナイフを飛び出させ、とてつもないスピードでマジカもどきへと投擲した。
狙いは的確だが――しかし。
「クフフフ」
含み笑いを零すマジカもどきの眼前で、そのナイフは静止した。まるで見えない壁に突き刺さったかのように、空中で。
「魔術師は基本的に、魔障壁を張って身を守っていること、忘れたの?」
ビターを嘲笑するマジカもどき。
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