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「お前の方こそ、私が魔術師の末裔であることを忘れたのかね? お前の魔法を褒めて羨む態度は見せたが、それが本心だとでも?」
相手が油断めいた態度を取るのを待っていたかのように、ビターはその顔を歪め、ニタリと嗤う。そして、
「――爆ぜよ!」
〝呪文〟を唱えた。
バォン!!
という、手榴弾並みの爆発が起こり、マジカもどきの身体が吹き飛ばされた。
い、今のは何だ!?
ビターがあんなことできるなんて、この映画を観た俺でも知らなかったぞ!?
「アッハハハ! 最高の夜だ! 大収穫の夜だ! 一人、二人、三人、四人と、憎い者を処刑できるのだからな!」
陶酔した様子で、空を振り仰ぐビター。
ボスが起こした爆発に刺激されてか、ジャンベリクにも動きがあった。
「これからてめぇに起こることを言い当ててやる。八つ裂きだ! ペタペタ胸!」
ピキ。
鈴からは、例の音が聴こえてきた。
ジャンベリクは身に纏う囚人服のポケットから一本の注射器を取り出し、まるで飢えた矢先に獲物を見つけた獣のように、目力を増大させてそれを凝視する。
あれは確か、打った相手の身体を巨大化させるっていう、夏葉原の裏社会では有名な、強烈なドーピング剤だ。
副作用が半端じゃなく、使用者は数分間の巨大化効果を得た後、数週間にわたって身体中の痙攣、激痛に見舞われるというものだったはず。
本来の展開では、それを打とうとしたところで、メルとリリィが操作するクレーンの鉄球が直撃して、奴はノックアウトになるんだけど、今回は違う。
「俺もビターの旦那と考え方が同じでな。ヤると決めた獲物は、どんな手を使ってでもヤる!」
ジャンベリクはそう言い放ち、右手で握った注射器を振り上げた。
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