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「さぁ、リターンマッチだ。ペチャパイパイ!」
ピキピキ!
またも降り注ぐセクハラ発言に、再び笑顔の仮面を装着した鈴は、
「あんたは大馬鹿野郎よ。馬鹿は痛い目を見ないと直らない」
そう言い放つと、まるで恐れを振り払うかのように上着を脱ぎ捨て、水色のシャツを腕まくりする。
そして、鍛え上げて筋張った前腕をぐっと握り込み、足を前後に開いて、プロボクサーのように、正面へ構えた。
その勇姿は、スクリーンには映えるだろうけど、こうして一緒に戦う立場になってみると、危険極まりない!
「鈴! 逃げろ!」
俺は思わずそう叫んだ。
「警官が悪者から逃げたら、止める人が居なくなっちゃうじゃない。危険な役回りをやるのも仕事の内よ? 心配は要らないわ!」
と、鈴は動揺を感じさせない声音で答えた。顔も相変わらず笑顔だ。
「ハッ! そんな細腕でこの俺の攻撃を受ける気か? それとも、その〝まな板〟で受け流すか?」
ピキベキブチ! ブシャアアアア!!
ジャンベリクの挑発で鈴の額の血管がついにブチ切れ、何かが噴き出した音が俺の左耳に聴こえた。赤い液体なんて、見えてないよ?
「無茶はするなよ? タコ殴りにされたら、可愛い顔が台無しだぜ!?」
「かわ!? わ、わたしはいいから、ビターを押さえて! あんたなら大丈夫よ!」
鈴は、俺が〝可愛い顔〟って言った瞬間に真顔になって、赤面し出したぞ? もしかして、これも怒らせるワードだったのか?
ともあれ、スイッチが入った鈴なら何とかなると、ここは信じるんだ。
いろいろ恐いけど、やるぞ、俺!
俺は再びビターの様子を窺う。どうにかして、俺に銃を向けている金髪のロン毛を倒し、ビターに背後から飛び掛かって捕まえるんだ!
と、俺が作戦を練る最中――。
「――呪文爆弾か。油断したわ」
ナイフの爆発で五メートル近い距離を飛ばされ、倒れていたマジカもどきが、身体から黒い煙を上げつつ立ち上がり、頬に着いた煤を手の甲で拭った。
「しぶとい小娘だ」
ビターは眉を寄せ、吐き捨てるように言う。
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