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マジカもどきは、衣装こそズタボロになって所々はだけてはいるが、身体の方へのダメージは少ないように見える。
呪文爆弾は、資料で読んだ覚えがある。要は、道具に魔力を注いで爆弾に変えた物のことだ。魔法陣を描いたり、詠唱したり、供物を用意したりと、ものすごく手間が掛かる代物で、上級の魔術師なんかは逆に面倒くさがってやらないとか。
「飛んで来たナイフのタイミングに合わせて張ったシールドを、わたしが解除した瞬間に爆発させるなんて、味な真似してくれるじゃない。この魔法衣が無ければ死んでいたところよ?」
マジカもどきは黒髪のショートヘアの上に、焼け焦げてよれよれになったとんがり帽子を被り直し、
「それじゃ、こっちのターンね!」
片方の腕を頭上に振り上げた。
すると、彼女の頭上が黄色く光り始め、直径一メートルくらいの光の球体が出現。それが計六つの玉に分かれて浮遊した。その光の玉は徐々に形を変化させ、光が消えると同時に、鋭く煌く銀のナイフとなって滞空。それからマジカもどきの腕の一振りでビターへと先端を向けると、目にも止まらぬ速さで飛び掛かった。
「なんだとッ!?」
一度に六本ものナイフに襲われ、ビターは咄嗟に両腕で自分の上半身を庇ったが、防いだのは三本。残りの三本はガードをすり抜け、胸に直撃した。
「ぐッ!? あぐぁ!!」
ビターは苦悶の呻きを上げて数歩後退り、そのまま仰向けに倒れた。
――う、嘘だろ!? ラスボスのはずのビターが、先にくたばっちまったぞ!? 街を守る立場からすれば万々歳だが、映画としてはどうなんだ!?
「ボス!」
俺の真後ろで、金髪のロン毛が狼狽えた声を上げた。
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