19人が本棚に入れています
本棚に追加
「もうオシマイ? 少し期待したけど、所詮は魔術師の卵ってことね」
「おまえ! よくもボスを!」
ビターを嗤うマジカもどきに、金髪のロン毛が報復の弾丸を見舞う。
カカカカカカカカッ!!
だがこれも、マジカもどきは新たに張った【魔障壁】で易々と凌いだ。
「雑魚に台詞なんて要らないんだけど?」
ギロリ。
マジカもどきは蛆虫を見遣るような目で金髪のロン毛を睨み、虚空に光の玉をもう一つ出現させた。
――まずい! また死傷者が出る!
「うおおおおおお!!」
俺は咄嗟に振り返り、金髪のロン毛にタックルを喰らわせ、
「うッ!?」
そのまま勢いに任せて俺もろとも倒れ込み、間一髪でマジカもどきの攻撃を躱した。
それから俺は金髪のロン毛の首に腕を押し付け、
「死にたくなかったらここに寝てろ! 後で安全に逮捕してやる!」
と吐き捨て、身を起こした。
「――ジャンベリクの奴、例の劇薬を使ったのね。少しヤバそうだけど、あいつ一人だけなら〝適度に追い込む〟の範疇ね」
人がピンチに陥ることに何の抵抗も無いのか、何を企んでいるのが全くわからない微笑を浮かべて、マジカもどきがつぶやくのを、【スクリーン・ヴィジョン】の左耳が微かに収音した。
ここへ来て、遠くの方から複数のサイレンが聴こえ始める。
――待ちわびた応援だ!
マジカもどきは俺にその破顔を向け、
「ギャラリーが増えそうだし、わたしは失礼するわ。今度はあなたが死ぬ時に会いましょう」
踵を返し、これも魔法なのか、人間離れしたジャンプ力でコンテナの上に飛び乗った。
「ま、待て!」
俺はそう叫び、走り出そうとした。
「栄治! これを使って!」
そこへ遠くから鈴の声が届き、振り向いたところに、赤く煌く何かがブーメランのように回転しつつ飛んで来た。
最初のコメントを投稿しよう!