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「――うおっと!?」
危うく頭に直撃するところをどうにかキャッチして、物を確認する。
ワインレッドのベレッタ――鈴の愛用銃じゃないか!
「それには〝あの弾〟が込めてあるわ! 魔術師をお願い!」
巨人ジャンベリクの、喰らえば一発でやられちまう攻撃を巧みに躱しながら、鈴は俺に〝切り札〟を託したんだ!
特注弾薬=【徹魔弾】を、こんな、駆け出しのもやし警官に!
「――了解!」
やるしかない!
恐れはここに捨てて行く!
鈴の期待に応えてみせるぞ!
「鈴ッ!」
気合でコンテナをよじ登った俺は振り返り、相棒の名を呼ばわる。
「――なに! 今取り込み中よ!」
ジャンベリクのフックを屈んで躱した鈴が応じる。
「負けるなよ?」
「あんたもね!」
「――よそ見をするんじゃねぇ! 舐めるな小娘!」
雄叫びを上げたジャンベリクが、その大量増加中の筋肉を活かした人外のスピードで、鈴めがけてパンチのラッシュを繰り出した。
鈴はそれを、ジャブを躱すボクサーのように、最短の移動距離で素早く、汗を散らしながら避け続ける。
ちくしょう! できることなら、今すぐに俺がジャンベリクの奴をぶちのめしてやりたい!
俺はこみ上げる感情を抑えて鈴に背を向け、闇の中にマジカもどきの姿を探す。
――居た!
マジカもどきはコンテナを伝って正門の方へと軽快に逃走中だ!
先端が反り返ったブーツはコスプレ衣装には最適といえども、走るのには向かないはずなのに、なんて足の速さだ!
「止まれ!」
俺は眉宇を引き締めて駆けだす。
マジカもどきはコンテナ三つを跨ぎ、四つ目で立ち止まった。
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