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島国である【大和民主主義共和国】の大陸は、現実世界でいうところの日本大陸と形が似ている。より具体的に言うと、青森県から山口県までの本州と、北海道がくっついたような形だ。
でも、これは〝大陸〟の話で、実際の【大和】の領土は、本州の部分だけ。この大陸には、陸続きで二つの国が存在するのだ。
残りの北海道の部分が魔王の国=【フォルドール】という設定である。
今では【禁断の亡国】と呼ばれているわ、謎の理由で立ち入りにも規制が掛かっているわで、シリーズ化されている本作の主人公の鈴も、劇中一度も行ったことがない。だから、世界大戦があったという歴史を観客に印象付けて、この映画の世界観を濃厚にするための、単なる補足設定に過ぎないと思っていた。
てっきり、セイヴも俺と同じ〝異世界人〟だと考えていたけど、そうじゃなかったんだ!
予想外の展開に頭がパンクしそうだよ。
「バイバイ。エイジくん」
「ま、待てッ!」
セイヴは〝何処へでもドア〟を開いて潜ると、俺が猛ダッシュで到達する寸前に、にこやかに手を振って閉じてしまった。
「――ぶぉッ!?」
〝何処へでもドア〟に盛大に顔面をぶつけた俺は跳ね返ってこけた。
途端、ドアはその色を薄めていき、煙のように霧散した。
に、逃げられた!
どうしてこうなるんだよ!
俺は顔面を強打したことによるものか、悔しさによるものかよくわからない涙を流しながら、仰向けに倒れた姿勢で夜空を見上げた。
またしても俺は、目の前で黒幕を取り逃がしてしまった。
満天の星たちが、まるで観客の眼のように光っている。
笑われているのか、応援されているのかわからない。
「……ちくしょう!」
俺は主人公でもなんでもない。居ても居なくてもこの物語には関係ない、モブ以下の存在だ。
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