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「お嬢ちゃん!」
間一髪、バン爺が気を失ったリリィを受け止めた。
「――パパ――栄治ッ!」
苦痛に耐える鈴の目からは、小さな滴が滲んでいる!
「ああん? なんだってぇ?」
血走った眼で、勝ち誇ったように鈴を見下ろすジャンベリク。
「なんて言ったんだ? ええ?」
そのなじるような振る舞いに、鈴は滴を振り払い、カッと目を見開いた。
「――わたしは負けない! だから――ッ!」
そして、尽きることを知らない信念を宿した眼で、
「負けるな! 栄治ィ!!」
と、俺の名を叫んだ。
「――その汚い足をどけやがれッ!!」
腹の底から、燃え滾る言葉を言い放ち、俺はコンテナから広場に降り立った。
「今度はなんだ!? 邪魔する奴は踏み潰すぞ!」
猛獣のような雄叫びを上げたジャンベリクは鈴から目を離し、俺の方を向いた。
「やれるものなら、やってみろ!」
俺は臆することなく、言い返す。
「てめぇは幕明の相棒だったな? それじゃ、てめぇの目の前でこの小娘をぶっ潰してからにするぜぇ!!」
そう言って、鈴を踏みつけていた足を高く持ち上げるジャンベリク。
そこへ――。
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン!!
魔法が解けて目を覚ましたメルが、仰向けのまま、咄嗟の状況判断で自身のベレッタを抜き、その全弾をジャンベリクの背中に浴びせかけた。
「次から次へと畜生がぁ!! チクチク痛ぇんだよ!!」
ジャンベリクは持ち上げた片足を一旦別の場所に降ろして、着弾の反動に耐えた。
バチバチバチ! という命中音が聴こえたが、ピンピンしているジャンベリクを見るに、どうやら浅い。巨大化に伴って筋肉も硬化しているのか、普通の銃火器では通じない状態だ。
「栄治! 俺のは弾切れだ! 頼む!」
と、メルは【007・スカイフォール】の【ダニエル・クレイグ】みたいな仰向けの射撃ポーズのまま俺に呼ばわる。メルのやつ、遠くに居る俺を目覚めてすぐに見つけるとか、凄い観察力だな!
「任せろ!」
俺はそう返し、鈴の愛用銃――ワインレッドのベレッタを構える。
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