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僕はバレンタインが好きか嫌いかと聞かれたら…何て答えたらいいんだろうか。 チョコレートという観点だけからみたら、嫌いだ。何でチョコレートなんだよ、全く。こっちの趣味趣向は無視か。甘いものを押し付けられて、甘いの好きじゃないからとやんわり言ったところで、「ひどい!!なんでそんなひどい事言うの!」と女子達からの罵詈雑言。 いや…君が好きじゃないとは言ってない。チョコレートが好きじゃないんだ。 だがしかし、そんな言い訳は彼女たちの前では無効。鬼のような顔つきの友達たちのせいで、君まで醜くみえてきて、僕の淡い恋心も即終了。ついでに僕の評判もガタ落ちした。 そんな過去もあったなぁ…なんて思いながら、今日も素晴らしい香りに包まれコーヒーを淹れる。 そう、僕はコーヒーが大好きすぎてバリスタになってしまった。 そして、今日も僕が働くカフェではバレンタインデートらしきカップルが楽しそうにしている。 本当なら、某チェーン店のようにキャラメルなんとかかんとか、みたいな物をだせばもっと若い女の子たちがお客様として来るんだろうけど、僕はあれは好きじゃない。純粋にコーヒーを楽しめる店に就職を決め、いつかは自分の店を持ちたいと淡い夢を抱いている。 「主任には、コーヒーチョコなんてどうですか?」 バイトの女の子が、小さな包みをエプロンのポケットに入れてくれた。 「お世話になってますチョコです。甘くないはず…です」 「義理チョコ文化もそろそろ衰退しそうだよなぁ。ホワイトデーのお返しはうまいコーヒーでいいかな?」 「バレンタインデーの仕掛け人がコーヒー好きな人だったら、もしかしたらバレンタインデーのプレゼントは美味しいホットコーヒーだったかもしれませんねぇ…。寒い時期だし」 その言葉を聞いて、 「バレンタインデーに大切なあの人と美味しいホットコーヒーを!」 なんてキャッチコピーが浮かんで来た。 そうだ、来年はコーヒーバレンタインで推してみよう。きっと僕みたいな甘いもの苦手な人もいるはずだ。 ただし、一緒に飲む味はほろ苦いけれど。
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