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プロローグ
「これで・・・よかったんたんだろ?華子ねえさん」
そうつぶやく三十過ぎの男の手にはパックに入った焼き鳥とビール。確かにまだまだ若い身空のくせにアルコールと結婚した奴にはうってつけの土産だろう。ただ、しかし・・・それは年頃の女への土産としてはいかがなのか?
「俺さ、先生になったんだぜ?晴れて公務員様だ。今ならねえさん達も食わせてやれるんだがなあ」
微笑む男の瞳にほのかに寂しさが映る。そういって男は少し湿った土の上に小ぶりのレジャーシートを敷き、「お前はもう飲めねえ。羨ましいか?」と、墓石に缶ビールをコツンとあてて、ぐびりとやってはグダグダと昔話を始めた。
「ねえさんが初めて作った男よ、あいつ微妙な奴だったよなあ、女々しいし、優柔不断でなあ・・・」
若気の至りだよ。今思えば私は何であんなのに夢中だったんだか。
「酒井んとこのクソガキ、あいつ今じゃ四大だぜ。肝試しでちびってやがったのによう」
ああ、私が結局なだめてやってなあ・・・あのクソガキにも可愛げがあったよ。
「なあ、話したりねえなあ・・・一緒に飲みたかったよ。ねえさん」
ああ、私もあんたと飲んでみたかったよ。だができない・・・この体のままでは。
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