ー 竜神の聖剣 ー

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 神学院を出たばかりで、国王の供どころか本来は神騎士長に同行するのも許されない新人は、分をわきまえるかのように低調な物腰で言った。 「副隊長閣下の陣がお使いになる武器は確認しました。ただ、こちらは国王陛下の陣のリストにある武器なんですが、その中に奇妙な物がありまして…」  ミロが捧げるように差し出した両手の上には、握り手の部分の少し上に、銀貨のような円形の装飾が施された、わずか20センチ足らずの小さな弓がある。既に弦にセットされている10センチ程の棒は矢だが、先端が吸盤になっているので奇妙に感じたのだろう。周りの従者達も興味深そうに新人騎士の手元を覗いている。  唇を開きかけたグラメルよりも早く、ダンデルクは若い神の騎士に答えを与えてやった。 「それは弓ではなく高所に登る為の道具だ。お前も使う事になるゆえ、よく見ておれ」 「はッ」  背筋を伸ばした新人騎士の手から小さい銀の弓を引き取ると、ダンデルクは操舵室の天井に左手を突き上げた。弦にセットされている矢に右手が触れた瞬間、突然、矢の先端に装着されている丸い吸盤から、水色の光の輪が放たれた。吸盤を中心に4重の円を描いた光の輪の内側に、象形文字が浮かび上がってゆっくり虚空を回転している。
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