ー 竜神の聖剣 ー

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「ひぁああぁぁあっ!? 何ですかあれはぁっ!? まるで妖精みたっ…おぅ、あれが妖精さん!」 「グラメル下がれっ…全員周囲を警戒しろっ、あやつも魔物の類に違いないッ」  号令で甲板の上に従者達が一斉に剣や弓、棍棒を構えた。やや遅れて剣を抜いたグラメルの隣で、ダンデルクは頭上や周りを警戒しつつ、航路のすぐ脇、湖の中心にポツンと佇む少女のような光の影を厳しく見据えた。  確かに青白い光に包まれたそれは、羽の生えた少女の精霊のように見える。バレリーナのように両腕をふわりと広げ、真っすぐに伸ばした右足のつま先で湖面に立ちながら、左足を大きく背中に突き上げゆらゆら揺れていた。  まるで船のからかうように湖面でふわふわ踊る姿は幻想的ですらある。ここが魔界でなければ純粋に感動できたかもしれない。だが、ダンデルクはこの世界で警戒を怠るような愚行は犯さなかった。より一層神経を研ぎ澄ませ、周囲の気配を探る。  その間も、美しい光の妖精は船に近づいたり離れたりを繰り返し、そして、一際大きく虚空へ舞い上がるや、ダンデルク達の頭上を飛び越えるように空を舞った。 「あれは、魔物なんでしょうか…?」
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