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南北に続く、海の岸壁に天高く築かれた白い壁。この西大陸を守る巨壁に造られた唯一の出入り口である断絶扉は、仇敵グリーモア帝国の物資輸送船を波止場に残したまま全開になっている。たぶん、貿易港で応戦していた警備兵団は全滅だろう。応援が望めないこの状況下では、親衛隊の戦力を総動員したところで、城もそう長くはもつまい。
「シトラウス長官っ、"奴ら"は何者なのですか!?」
叫んだ親衛隊副隊長の低い声は、動揺と恐怖で震えていた。5メートルもの高さがある城の重厚な黄金扉は、西大陸でこの王国だけが持つ高度先進技術を駆使した"電磁錠"によって固く守られている。にもかかわらず、若獅子との異名を持つ屈強な副隊長の顔が強張っているのは、今、この都を襲っている敵が人類ではないからだ。
「長官っ、"奴ら"が言い伝えの"帝国人"なんですか!? 我らはあんなバケモノと数千年間も波止場で取り引きをしていたと!?」
「いいえっ、あれは帝国人ではありません!」
今や、確かなことは何一つなくなった。だがグラメルは確信を持って答えた。
「あれは東大陸にいる魔物か、何者かによって生み出された人造生物だと思います! きっと軍団の中にバケモノどもを率いている帝国人がいるはずです!」
「クソッ、まさかこんな日がくるなんてッ…長官っ、ここは我らにお任せ下さい! なんとか時間を稼ぎますので、その間に長官は国王陛下と王族の方々を大神殿に避難させて下さい!」
「セージュっ……!」
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