0人が本棚に入れています
本棚に追加
君がいなくなって一年目の冬。私は久しぶりに実家へ帰ってきた。
多分、寂しかったのだろう。君と過ごした今の家は一人だととても広く感じるから。
そうして、久しぶりにリビングでくつろぎながら窓から庭の景色を眺める。
月明かりに照らされた、ネコの額ほどの小さな庭。今はそんな庭に真っ白い雪が降り積もっていた。
その懐かしい風景に少しだけほっとする。
そして、同時にふと君のことも思い出した。
君のことを忘れるために帰ってきたのに、やっぱり君のことを思い出した。
そういえば子どもの頃、私はこの庭で雪遊びをするのが大好きだった。君ともよくこの庭で遊んだっけ。
「雪でお城を作ろうよ」
いつだったか、そう言って二人で雪の城を作ったこともあった。あまりよく覚えていないけど、子どもながらにかなり立派なお城を作ったような気がする。
私はそれがとても気に入って、二人でずっとここにいようよ、なんて約束もした。
雪で出来た城なのだから、勿論そんなことできるはずもない。
雪はすぐに溶け、消えてしまう。
実際、数日後には雪の城もきれいさっぱり姿を消した。
残ったのは、いつもの寂しい冬の庭だけ。
当時はそれがなんだかとても悲しくって、私はつい泣き出してしまった。
君はそんな私の隣にいて、ずっと手を握っていてくれたね。
その手はとても温かくって、悲しかったのに嬉しかったことだけは、今でもよく覚えている。
最初のコメントを投稿しよう!