0人が本棚に入れています
本棚に追加
渡り廊下を歩いていると、たびたび桜が舞っては、私の頬を撫でていく。
短いような遠いような距離を歩くと、拝殿についた。拝殿の周りには壁がなく、吹き抜けの構造になっている。
ぼんやりとした月明かりを頼りに歩いていると、変わった陰陽師のような服を着た男の人が端っこに、腰掛けているのを発見した。
その人はゆっくりと私のほうを振り向く。
ぼんやりとした月明かりでも、その人がとても美しいことが分かった。その人は桜色の唇をにっこりとさせて、こちらに向かって手招きする。
恐る恐る近づくと、今度は自分の隣をトントンとたたいた。
座れということだろうか?
隣に座ると、その人は徳利からお猪口に酒をとぼとぼ入れて、口に含む。その様子をじっと見ていると、その人は自分に向かって、お猪口を差し出した。
「飲むかい? 」
「いえ、大丈夫です」
お酒なんて飲んだら、両親と友人に更に迷惑をかける。
「そうかい」
その人はまたお猪口を自分の口に傾けた。
「桜、綺麗だねぇ」
「そうですね」
ひらひらと桜の花びらが散っていく。
最初のコメントを投稿しよう!