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俺は自分の置かれた状況が理解できなかった。
さっきまで自分の家にいたのに、白い空間に飲み込まれて、意識を失っていたのかわからないが、気が付いたら、石造りの古めかしい通路のような場所にいた。
どうしよう、学校の課題が終わってないし、
家に帰ったら読もうとしてたラノベもあったのに…。
ん? いや待てよ。 ラノベ?
たしか最近読んでたラノベに今の俺と同じような状況の主人公が出てくるものがあったな。
家への帰り道に白い光に包まれたと思ったら何故か洞窟にいたっていうラノベ。
この状況はその異世界転移系のラノベと似たような展開。
そうなると、今の俺は主人公の立ち位置だよな。
となると、この後勇者とかになって異世界で無双しちゃう展開になるのか?
そしたら俺はこの世界での人気者、今までの平凡な生活とはおさらば……。
「へへへっ」
おっと、つい笑いがこぼれてしまった。
これからの展開が楽しみすぎたよ。
しかし、この空間を抜け出さないことには何も始まらない。
まずここは何なんだ。 ダンジョンか何かか?
だとしたら、どこかに出口があるはずだ。
よし、まずはこのダンジョンのようなものの出口を探そう。
俺はそう決心して出口を探すために立ち上がり、
歩き出そうとしたとき。
ベチョッ ベチョッ
後ろから変な音が聞こえてきた。
不快感を催す謎の音。
何の音だ?
水が地面に当たったときの音に似ているが違う。
これはもっと粘度の高い液体のようだ。
想像が膨らみ、恐怖心が煽られていく。
しかし、それと同時に好奇心も出てきていた。
非現実的な空間や、自分の置かれた状況など、さまざまなものが相まって、好奇心の方が恐怖心より勝ってしまっていた。
そして、俺は意を決して後ろを振り向いた。
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