気づけば以心伝心、相思相愛

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職場では、一応業務はこなしつつも、あっちこっちでチョコの受け渡しが行われていた。 「みなさーん!お待ちかねのチョコ配りますよー」 隣の席の先輩社員が、大きな紙袋を手に持って立ち上がる。日頃から愛想の良い彼女は、男性社員だけでなく女性社員にも配って回っている。 当然の様に手渡されたチョコを眺めていると、誰かに肩を叩かれた。 「はーしかーわさん!はいっ!お約束のチョコです」 「え。あ、ありがとう」 ニコニコしてこちらを見ている彼女。嬉しさは当然あるものの、やはり他の同僚達にも渡しているのだろうと思うと喜びきれない。 「それでは!……中身、お昼休みにでも確認して下さいね」 そう言い残して、九重さんは自分のデスクに戻っていった。彼女を見送っていると、未だ空席の隣とは反対、左隣からうらやましげな声が聞こえてきた。 「橋川先輩、九重さんか貰ったんですか?いいなーいいなー」 「貴方だって貰ってるんでしょう?義理チョコ」 白々しいことを…と思いながら素っ気なく返答すると、意外な反応が返ってきた。 「貰って無いですよ!九重さんならくれるかなーって期待はしてましたけど、空振りです。寧ろ、橋川先輩以外に渡してるの今日見てないですよ」 「…は?いや、え?」 まだ彼が何事か喋っているようだが、話の内容が脳まで届かない。ふと、先程の彼女の言葉が気になり、貰った袋の中身を漁る。 手の平程の大きさの箱を開けると、美味しそうなチョコレートを発見した。次いで、中身を取り出した袋をもう一度覗いてみると、箱で隠れていたらしい小さなカードが出てきた。 手にとって裏返しーーーー思考が停止した。
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