ライフ・ダービー(1)

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麻賀(あさが)涼は息を切らしながら商店街を走っていた。ライフ・ダービーの開催地に選ばれたというだけあって、街から人の気配は殆ど消えていた。静寂の中を麻賀は駆け抜けていった。 『何故悪人がのさばらないといけないのか』  すべての発端は総理のこの一言だった。いじめ問題に言及した一言だったが、それがネットを通じて瞬く間に世間に流布され、多くの賛同を集めた。  麻賀の目にどこかの人権団体の貼ったポスターが映った。 『私たちの言葉は総理の言葉である!』  酷く間抜けだと麻賀は思った。  気をよくした総理は効率よく悪人を淘汰しうるシステムを考えた。それがこのライフ・ダービーである。主に服役中の者、前科のある者、少年院に送られた者、多くの署名を集め悪人認定された者たちなどが、〝悪人〟となり、それ以外の〝善人〟が彼らを狩るという極めて悪趣味なゲームだった。  麻賀はバカな話だと思った。しかしあろうことかこの法案は国会を通ってしまった。 ダダダダダダ! 「くっ!」
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