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「それと告白したいこともあったんだよねー」
「え?何?」
戸惑いながら2人の様子をぼんやり眺めていると、コハクの言葉が聞こえてきて、俺は聞き返す。
「きれいに焼けましたよー!!」「まだ他にも仲間がいるんだよ」
「え?なんて?」
「さあて、食べよー!!」
「え、コハク、今なんか言ったろ?」
「僕、バレンタイン気に入っちゃったなー。楽しいから来年もみんなでバレンタインパーティーしようね!」
結局俺の言葉はスルーされて、チョコレートの甘い香りと明るい空気が家の中を満たす。
元々この家の住人だったミケは、この空気感に違和感を覚えているのか、それともバレンタインデートがあるのか、姿を見せていなかった。
でも、ここ数年ひとりっきりで過ごしていた俺のバレンタインは、にぎやかになっていた。
それはいつも意図せず存在していた『不思議』のおかげだった。
特に興味を持てずにいたバレンタインが、これからは楽しみなイベントになる・・・・・・いや、それは言い過ぎか。
少しは楽しみなイベントになったのかもしれない。
いや、待て。
これからってなんだ、これからって。
冷静に考えれば、嬉しくもない緊張感に包まれるイベントになっちゃっただけなんじゃないだろうか。
それも、これからもやっかいなことに巻き込まれることがはっきりしたんじゃないだろうか。
そんなことに、食べるだけ食べた後で、かなり雑然としている台所を眺めながら俺は、気づいた。
でも、コハクもチトセさんも楽しそうだから、とりあえずその言葉は飲みこんでおいた。
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