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2章.君の笑顔
けたたましい音が部屋中に響き渡り、重い瞼をゆっくりと開ける。
開ききっていない目で部屋中を見渡し、ベッドの隣にあるサイドテーブルに手を伸ばすと、音の根源である目覚まし時計の解除スイッチを押す。
もぞもぞとベッドの中で動き回っていると、傍にある窓のカーテンの隙間から眩しい光が差し込み、その光は真っ直ぐに俺を照らした。
眩しさで徐々に思考がはっきりしてくる。
「あれ…ゆ、め…?」
むくりと上半身を起こし、開ききっていない瞼を擦る。
なんであんな昔の夢見たんだろ…。
今まで見たことのなかった昔の夢。
龍司と初めて会った時の夢
まだはっきりしない意識で、ぼーっと部屋の一点を見つめる。
湊はゆっくりと深呼吸をし、大きく背伸びをした。
背伸びをした事で脳が目覚めていく。
徐々にはっきりしていく意識の中で、先程見ていた夢の内容にため息が出る。
もうこれで何回目かもわからない程、何度も見た夢。
思い出したくない訳じゃない。
でも龍司と初めて会った時の事を思い出すと、自然と一緒に思い出すのが父さんの事なのだ。
思い出したいけど思い出したくない複雑な心境に、ため息をつきながら湊は布団を握った。
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