2章.君の笑顔

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父さんが仕事に出かけてから10年の月日が流れた。 仕事に行ったと言える日にちとは、到底言えない日数である。 龍司に助けられてから、龍司の家でひたすら父さんの事を待ち続けた。 数分おきにこまめに窓から公園を見る日々が続いた。 朝も、昼も、夜も…。 でも、一週間経っても一か月経っても、一年経っても父さんが公園に現れる事はなかった。 そしてわかってしまったのだ。 “捨てられた”のだと。 幼い俺はひたすら泣き続けた。 何故父さんが俺を捨てたのかが、全く分からなかったからだ。 母さんが死んでから、ずっといい子にしていたつもりだった。 泣いたら父さんに迷惑かけてしまう、我儘言ったら父さんを困らせてしまう。 そう思っていたから。 俺が笑っていれば父さんも喜んでくれる。 だからどんなことがあっても笑顔でいた。 なのに、なんで?どうして? 叫ぶように龍司に迫った事もあった。 龍司はなにも話さず、じっと俺を見つめ強く抱きしめてきた。 そして一言だけ言ったのだ『俺がいるから』と 「はぁ。思い出したくなかったなぁ…」 昔の事を思い出すと、胸が締め付けられるように苦しくなる。 その時だった。 コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえ、湊は扉の方へ視線を移した。 「湊?朝だぞ。起きてるか?」 「あっ、龍司!うん、起きてる!」     
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