3章.歯車は動き出す

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昔から湊には助けてもらってばかりだ。 この、感謝の気持ちと溢れて止まらない愛情を俺はどうしたらいい――? 人を―、 人をこんなに好きだと、愛してやまないと思ったのは湊だけだ。 ――――湊、 愛している…湊。 お前を、どうしようもなく愛しているんだ――――― 龍司の瞳がまた大きく開かれた。 抱きしめられた湊からは、やっぱりあの時と同じ甘くて優しい匂いがする。 揺れ動いた切れ長の瞳からは、龍司には似合わない程の大粒の涙が流れた。 大切な湊の背中に、大きな龍司の太い腕が回される。 がっちりと抱きしめたその腕は僅かに震えていた。 「…み、なと…ッ。俺はずっと、お前のことが好きだったッ…!10年前からなんかじゃない…!お前が産まれた時からずっと…湊の笑顔に何度、俺の心が救われたか…!!」 「俺は湊がいたから…湊だから好きになった!!愛すようになった…!!初めて人を好きだと…ッ!!どうしようもない位に愛していると…大切だと思えたんだッ!!湊…俺を辛くて苦しい闇の世界から救ってくれたあの時から俺はずっと――…」 ――――お前だけを見てきた。 湊だけを想ってきた。 久堂の家での居心地が悪い生活環境の中でも、父上と母上からどんな暴言を浴びようと、言いなりの人形の様に扱われようとも、俺はなんてことなかった。
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