4章.ふたりの想い、消えゆく笑顔

2/160
2658人が本棚に入れています
本棚に追加
/668ページ
「…おい、しい…!」 とても濃厚で、あっという間に甘さが広がるのに、いつまでもくどく甘さが残らず、スッキリとしたちょうどいい後味のココアに、まじまじとティーカップの中のココアを凝視する。 「ふっ、当たり前だろ。湊の為に、特別美味しいココアを取り寄せたんだからな。」 「ふぇっ!?そうなの?」 “湊の為に” 何気なく言われた龍司からの言葉に、顔が赤くなるのが分かった。 動揺して落としそうになったティーカップを握りなおすと、真っ直ぐ湊の方を見つめてくる龍司の視線に耐え切れなくなり、ティーカップをテーブルに置いた。 赤くなった顔を見られない様に、恥ずかしそうに視線を逸らすも、龍司の視線は未だ感じる。 「湊…?」 「っ…」 どうしよう。 顔が熱くて、龍司の顔が見れない。 胸が今までにないくらいにドキドキしている。 初めて人を好きになって、その人と―――龍司と想いが伝わったからなのかな? 前だったらここまでにはならなかったのに、今じゃ龍司のどんな言葉にも反応をしてしまう自分がいる。 今までと同じように龍司を見ることができない…。 湊は胸元の服をきゅっと握ると同時に瞳も閉じて、落ち着こうと深呼吸をする。 なにも話そうとしない龍司の視線だけが、痛いくらいに感じられた。
/668ページ

最初のコメントを投稿しよう!