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1章.出会い
降りしきる雨は一向に止む気配はなく、父さんが姿を消してから9時間が経った。
元々明るくなかった空が更に暗くなると、公園に設置されている外灯に灯りが灯り始める。
時刻は午後6時を回っていて、いつもなら学校で提出された宿題を終わらせている時間帯だ。
なぜ、今日は外で待つのだろう?
そんな疑問がふと浮かんだ。
心配性の父さんの事だから、小学生の子供を外で雨の中待たせるなんて事はしないはず。
だったら今日に限ってなんで?
分からない疑問ばかりが俺の頭をぐるぐるとかけ巡る。
「寒い…父さんまだかなぁ」
冷えきった手で傘をしっかりと握りながら小さく呟いたその声が、やけに大きく聞こえ、更に俺を孤独にさせる。
…寒い…
季節はもう11月後半。
雪こそは降っていないが冬は冬。
日中はまだ大丈夫でも、夕方になるとぐっと気温は下がるため、ロングTシャツに薄手のジャンパーだけではさすがに寒い。
雨が降っているせいもあって体は濡れ、寒さは倍増している。
既に感覚がなくなってきた手は真っ赤で、片方の手を口元に近付けると息を吹きかける。
片方の手を温め終わると次は傘を持っていた手を温めた。
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