3、あまくにがいきみ

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3、あまくにがいきみ

「え?」 そのチョコは記憶にある。高級ブランドの大きな箱に入った、とろけるように美味しいチョコレート。でも、誰がくれたかわからなくて……。 ――みわ はるくんだいすき なんてことだ。 僕の名前は三輪晴希で、未羽と組んでから正式には「斎藤・三輪ペア」なのに「みわみわペア」と呼ばれたりしている。2人が結婚したら三輪未羽だねとかいう冗談も100回ぐらいは言われてきた。 なのに、あのメッセージの「みわ」が未羽かもなんて考えもしなかった。 「みわって名字のことかと」 「みわはる、なんて呼ばれたこともないのに?」 母のあきれた視線が突き刺さって痛い。 あの年、手渡しでチョコレートをくれた女の子には、ホワイトデーにお返しをした。母が父のを買うついでに僕のも用意してくれたのだが、1個多かったから自分で食べたのを覚えている。 つまり、僕はもっとも高級なチョコをくれた女の子にだけ、何も返さなかったわけだ。そういえば、未羽の塩対応もそのころはじまった気がする。
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