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高3のバレンタインデー。
僕はチョコレート断ちを宣言していた。
「アスリートとして本気で頑張るため」
SNSで公言した当初は、本当にやめられるのか、少しぐらいいいんじゃないかと騒がれたが、手渡しはもちろん所属クラブに送られても受け取り拒否しますとはっきり言った。
「晴希、お待たせ」
狭いロビーで雪景色を眺めていた僕は、その声にふり向いて微笑む。
ふわふわの白いコートを着た未羽が手を差し出している。
「可愛い。似合ってるよ」
つないだ手にキスすると、未羽はくすぐったそうに笑った。
「ありがと」
「行こっか」
「うん」
ここはカナダのとある街で、僕たちは世界選手権前の調整のため、小さなホテルに滞在して練習に没頭している。
「バレンタインデートなんて初めて」
未羽はつないだ手に力をこめ、僕を見上げた。
「僕も」
「本当?」
「だって、今までのバレンタインデーって練習で忙しかったし」
「そういえば、ずっと一緒に過ごしてたんだよね」
嬉しそうな未羽が腕をからめてくるのを、僕は不思議な気持ちで受け止めていた。
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