21人が本棚に入れています
本棚に追加
未羽が僕を好きだということも、自分が未羽を好きだということも、数か月前の僕は知らない。誰よりも近くにいながら、お互い何年も誤解していて気づかなかったのだ。
僕らはじっくり話し合い、パートナーを継続することを決め、恋人同士になった。
そして高校を卒業したら一緒にカナダに留学することにした。
まわりは驚いたようだが、僕もこの展開には驚いている。
未羽がべったり甘えるようになったのにも、すごく驚いた。
そのかわり、練習の時は以前にもまして手厳しい。
「しっかりけじめつけないと」
きまじめに主張する顔が可愛くてたまらず、僕は今まで彼女がどんな気持ちで我慢してきたか理解した。
甘くて苦い初めての恋人は、まるでチョコレートのよう。
「これ……」
未羽はポケットから細長い箱を取り出した。
「バレンタインチョコ」
「ありがと」
僕は心からの笑顔でお礼を言う。
「でも、いいの? これだけで」
「うん。大満足」
好きな人からもらう本命チョコ。
昔、母が言っていたことの意味が今ならわかる。
「あ、美味しい」
口に入れた瞬間、とろけるような幸福感に包まれた。
まさに天国。
「ほんと良い顔して食べるよね」
未羽の笑顔は、食べてしまいたくなるほど可愛かった。
それから僕らが世界を飛び回る活躍をして、何年後かに氷上プロポーズを決めるまでの物語は、またいつか。
最初のコメントを投稿しよう!