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いつの間にか眠っていたらしい。
「はるくん」
女の子の声が聞こえ、誰かが手を握っていることに気づく。
この小さくて華奢な冷たい手は……未羽?
灯りの点いていない部屋は薄暗く、目をあけてもよく見えなかった。
でもこれは毎日つないで握って練習してきたパートナーの手に違いない。
「ごめんね」
涙声だった。
だけど未羽が僕の手を握って泣いて謝るなんて、どう考えてもありえない。
――これは夢だな!
願望の現れなのか。
どうせ夢なら土下座して謝ってもらいたいぐらいなのに、僕も甘い男だ。
「謝罪しに来たの?」
未羽は驚いたようでビクッとシルエットが揺れた。
ほどいて逃げようとした手をがっちり捕まえる。
「何で黙って留学しようと?」
「ごめん」
「理由おしえて」
未羽は口ごもり、僕に捕まえられた手が汗びっしょりになる。緊張している時の反応だ。
「……限界だから」
発言するやいなや、未羽はベッドの僕に馬乗りになった。
「えっ?」
未羽はすごい力で僕を押さえつけると、唇にかぶりついてきた。
「!!!」
むちゃくちゃなキスに息も絶え絶えになり、僕はこれが夢じゃなく現実であることを認識した。
どういうことなのか考えようとしても、心臓はバクバクいうし頭はグルグルするしで、何が何だか全然さっぱりわからない。
「晴希といると、こういうことしたくてたまらなくなる。ずっと抑えてきたけどもう限界。私おかしいよね? 変だよね? このまま晴希と組んでたらまともな自分に戻れなくなりそうで……だから思いっきり嫌われて遠く行こうと思ったんだよ。でも、あんた泣くんだもん!」
まくしたてるように説明した未羽は、僕の制服のネクタイを乱暴にほどきポイと宙に放った。そして次にシャツのボタンを外しはじめる。
「お願い! 1回だけでいいから」
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