2、ぼくのはじめて

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「ちょ……やめっ」 「おとなしくして。こういうこと慣れてるんでしょ」 「慣れてるって何!?」 僕はカッとなって未羽を押し退()け、ベッドから離れた。 「そんな風に思ってたんだ? 悪いけどキスだって今のが初めてだから」 「嘘……」 「ほんとだよ。だいたいさ、放課後も土日もずっと練習してるのに、女の子と遊ぶヒマなんかあるわけないだろ」 部屋の灯りをつけてふり向くと、未羽はベッドの上で顔を隠して小さくなっていた。 「ごめん、ずっと誤解してた……チョコ目当てなんて口実で、本音は遊び目的でモテたいんだって」 僕は深いため息をついた。 バレンタインデーが大好きで、チョコをもらうために頑張ってる――未羽には宣言したことがある。ずいぶん前、まだ子どもの頃だ。 「未羽は1回もチョコくれなかったよね」 「昔あげたよ? 無視されたけど……そのうえ忘れられてるとか、正直つらい」 信じられないことに、未羽は泣きべそをかいていた。 「いつの話?」 「言いたくない。どんな(はずかし)めよ」 「ちょっと失礼!」 いきなりドアがあいて母が入ってきた。 「2人とも深刻そうだったから様子うかがってたんだけど」 「盗み聞き!?」 「晴希、お母さん情けないわ。女の子にこんな恥かかせて」 母はベッドに行くと未羽の肩を抱いて座り、非難がましい目で僕を見上げた。 わけがわからない。恥をかかされたのは、むしろ僕の方じゃないか。
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