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「何時頃になる?」
「迷ってるの。金曜の夜だと遅くなっちゃうから土曜の朝のにしようかと思って。着くのはお昼くらいになっちゃうけど。」
「金曜だと遅いって何時くらい?」
「23時半くらいに着くのかな。確か。」
「そうだな。確かそれくらいだよ。大丈夫だよ。俺は遅くても。」
「あんまり遅いのも悪いかなって。早く会いたいけど。」
「俺もだよ。金曜においで。」
「うん。そうする。」
大阪に行くと決めてからは二人とも一緒に旅行のプランを立てているようにはしゃいでいた。
「何かこっちから買っていくものとかある?東京にしかないもので欲しいものとか。」
「ないよ。愛実が欲しい。」
「もうっ…」
照れながら大胆になって言ってみた。
「私も長谷部さんが欲しい。」
「ガマンできない?」
「ガマンできない。」
「ガマンできなかったらどうするの?」
「どうしよう……」
「ったく。ヤラシイなぁ。愛実。」
「どうしてそうなるのよ。」
「浮気するなよ。」
「私が?長谷部さんこそ。」
そっか。長谷部さんはもう浮気してるんだよね、と気づかない方が幸せなことに気づいてしまった。
「ズルいね、長谷部さん。」
「ん?」
「私には浮気するなよって言うんだから。」
私が浮気なんてできっこないのを知ってて言うんだから。ズルい。
「心配だからさ。愛実は可愛いから。」
「ほんと、ズルい。」
私だけがいつも嫉妬に苦しんでる。私と同じように長谷部さんも嫉妬してみればいい。どんなに苦しいか。
だけど長谷部さんは嫉妬をする相手がいなかったのだ。私が長谷部さんしか見えなかったから。長谷部さんしか見ようともしてなかったから。
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